【ディズニーキャストざわざわ日記】は、キリンビールに34年間務めた後に57歳でディズニーランドを経営しているオリエンタルランドに準社員として入社し、65歳で退職するまでの8年間の間に「夢の国」で清掃スタッフとして従事した笠原 一郎さんによる著書。
あの「夢の国」の表側と裏側の仕事について赤裸々に書かれたエッセイです。
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】についてあらすじや感想をご紹介しますので、ぜひ読んでみてくださいね。
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】書籍情報
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】あらすじ
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】のあらすじについて、まずはご紹介していきます。
某月某日 何をしているんですか?:ゲストからの質問
笠原 一郎さんがディズニーランドでスイーピングと呼ばれる掃き掃除をしていたところ、2人組の女子高生が近寄って来て「何をしているんですか?」と聞いてきた。
誰がどう見ても掃き掃除をしているのは一目瞭然なのにその質問の意図が全くわからず、笠原 一郎さんは「ゴミを集めている」ということを答えたところ、2人はなぜか怪訝そうに顔を見合わせたあと無言でその場を立ち去って行った。
その後も小学生のお子さんを連れたお母さんからも「何を集めているんですか?」という不思議な質問を受けた。
正直に「地面に落ちているポップコーンを集めています」と答えると、なぜか親子そろってがっかりされてしまったという。
笠原 一郎さんはさすがにこれは変だなと思い、勤続年数が10年のベテランキャストの同僚に質問を受けた件について聞いてみた。
その質問はゲストからよく聞かれる機会があり、その質問に対しての一番オーソドックスな模範返答は「夢のカケラを集めています!」だという。
翌日にさっそくリベンジのチャンスが訪れたので同僚に教わった通り「夢のカケラを集めています」と答えてみたところ、質問してきた女性の表情がとっても明るくなり嬉しそうな表情で「ありがとうございます」とお辞儀して去って行った。
笠原 一郎さんはその後もオーソドックスな返答をしていたが、たまに「な~んだ、またその答えか・・・」や「夢のカケラを集めてどうするんですか?」などと返答に対してツッコミを入れてくるゲストもいた。
キャストによっては自分のオリジナルの返答をする人もいたが、笠原 一郎さんは恥ずかしさもあってオーソドックスな回答ばかりをしていた。
そしてある時ゲストから「愛ってなんですか?」と唐突に質問された。
笠原 一郎さんはその質問に対してなんと返答したのか・・・?
某月某日 ゴミ屋さん:清掃業への差別意識を考える
笠原 一郎さんがパレードが始まる前にお掃除用のカートを押しながら「お済のものがございましたらどうぞ」とゲストの方達に声をかけながらゴミの回収をしていた。
その時、「ねえ、ゴミ屋さん!」といきなり大声で呼びかけられたのだが、「ゴミ屋」と呼ばれたことにショックを受けてしまい、思わずその場で立ち尽くしてしまった。
笠原 一郎さん自身は清掃業への差別意識を持ったことはなく、誇りを持って行っていた仕事だったが、ゴミ屋さんと呼ばれた日はなぜか一日中もやもやした気持ちが心の中に残っていた。
「ゴミ屋さん」と呼びかけられたことで感じた心のもやもやの正体はいったいなんなのかと考えてみた。
世間ではいまだに清掃労働者への差別は根強く残っていて、清掃という職業が日常に不可欠な仕事であると頭ではわかっていても、心のどこかでは知らず知らずのうちに清掃労働者の方を下に見てしまっていて、それが「ゴミ屋」という呼びかけとして現れたのではないかと考えた。
笠原 一郎さんがディズニーランドでカストーディアルキャストをしていた8年間の間、レストルームでゲストから「ありがとうございます」「お疲れさま」ですと声をかけられたのは何回だったのか・・・?
某月某日 三度のメシより好きなもの:心が浮きだつ「解消」
笠原 一郎さんが三度のメシより好きなものは、「解消」である。
初めて「解消」と聞いた時は「契約解消」かと思いギクッとしたのだが、「解消」とは「契約解消」ではなく「勤務解消」のことである。
オリエンタルランドは日ごとの来園者数を事前に予測し、その来場者数に応じたキャストの配置を組み立てている。
でも当日の天候などにより実際の来園者数が当初の予測を下回ることがあるので、来場者数が下回った場合は余剰と思われるキャストに対して、当日の勤務中や勤務前に勤務中止を伝えることを「解消」と呼ぶという。
「解消」には「全解消」「一部解消」などのいくつかの種類があり、笠原 一郎さんは予定よりも早く仕事から上がれるだけでなんだか特別な解放感を味わうことが出来て、むしろ「解消」の連絡がくるのをウキウキ心待ちにしているくらいだった。
でも同僚の中には収入が減るのを避けたいがゆえに「解消」を嫌がる人もいた。
ある日、「解消」の判断が下され素直に喜んでいたら、SVにワードローブビルの会議室に行ってくれという指示があり、笠原 一郎さんと同じように「解消」と伝えられた同僚と一緒に会議室に行ってみたところ、まさかの思いがけないことが待ち受けていた。
「解消」と聞いて喜んでいた笠原 一郎さんを待ち受けていたものとは・・・?
某月某日 迷子:非日常の世界観を守るため
パーク内では非日常の世界観を守るために迷子探しのアナウンス放送は行ってはおらず、キャストが12歳以下の小学生の迷子を見つけた場合は、マニュアル通りに迷子センターに案内する決まりであるが、迷子対応にはキャストにとっても責任が伴う。
迷子センターには子供たち用の絵本やゲームも揃えており、キャストのお姉さんの優しい対応のおかげか、笠原 一郎さんは今まで迷子センターで泣いている子供をみかけたことがないという。
迷子探しのアナウンス放送を行わないことに加えて、笠原 一郎さんは迷子への語りかけ方についてパークのその細やかな気づかいに感心した。
迷子を保護した時に、迷子に対して「一緒に来た人」と語りかける理由とは・・・?
ディズニーキャストざわざわ日記 (日記シリーズ) [ 笠原 一郎 ]
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】の感想
昔からディズニーランドには特に惹かれることもなく、今ままでディズニーランドとディズニーシーにそれぞれ1回ずつしか行ったことがないので、特にディズニーに対してなんの思い入れなどはなかったのですが、本著の表紙のイラストを見た時になぜだか気になりつい手に取ってしまいました。
テレビやネットの情報でディズニーの清掃員の方の素晴らしいホスピタリティについてはたまに目にしたことがあったものの、たまたまホスピタリティ豊かな方が従事しているだけなのかと思っていました。
でも本著を読むことでその人だけが特別なのではなくその職場の環境がホスピタリティ豊かな方を作っているということがわかりました。
ホスピタリティはディズニーだけに限らず、社会生活を送るうえでとても大切なものだと思います。
ただ、誰しもその心を当たり前のように持っている訳では無いので、自分が気持ちのこもった対応を受けた時などにそれをまた別の方に自分が与えられるようにそういった優しさのバトンなのではないかと思いました。
本著には綺麗事の話ばかりでなく準社員の当時の時給の話や時給upの話やオリエンタルランドの業務の指示の出し方などについても書かれています。
好きな気持ちだけでは働くことが出来ない厳しい現実を知り、これだけお客様を喜ばせたり幸せにしている従業員の方達も幸せな気持ちで働けるような労働条件になってもらいたいなという気持ちになりました。
笠原一郎【ディズニーキャストざわざわ日記】のおすすめポイント
笠原 一郎さんは「カストーディアルキャスト」と呼ばれるポジションで「歩くコンシェルジュ」としてどんなに悪天候でもオンステージをひたすら歩き回りながら清掃業務やゲストの案内にいそしんでいました。
真夏の炎天下や冬の極寒の時期での過酷な勤務について赤裸々に書かれており、勤務するうえでの色んなルールも書かれているので、普段はなかなか表に出ることのないキャストの苦労などを知ることが出来ます。
夢の国で働いているからと言って、そこの従業員の方が全員心清らかでなんの問題もなく幸せに働けている訳では無く、他の企業と同じように色んな人間関係や上司との関係で悩んでいたり、同僚達との愚痴などについても書かれているので物凄く共感出来る部分も沢山あっておススメです。
ディズニーにはキャストとして守るべき身だしなみを事細かく定めた「ディズニールック」というガイドラインがある。
それだけで一冊のパンフレットになっており基本的な考え方としては誰から見ても好感を持たれる身だしなみということであり、出勤する際の私服についても「キャストにふさわしいもので」ということまで定められていて驚きましたが、実際現場はどういう状況だったのかについても詳しく書かれているのでとても興味深く読むことが出来ます。
まとめ
ディズニーが好きな方には、表に出ているキャストだけではく裏でも頑張っているキャストさんの姿を知ることが出来るので、これからディズニーに行った時にはアトラクションだけではなくキャストの方達のお仕事ぶりにも目が留まり楽しみ方が増えると思います。
私のように特にディズニーに興味がない方にも、ディズニーがただキラキラしている場所なのではなく、陰で沢山のキャストの方達のホスピタリティによって築かれているということがわかり、そのホスピタリティは自分の仕事のスタンスにもとても参考になるのでおススメです。
仕事にやりがいを感じない方にとっては、笠原 一郎さんが仕事を通じて感じたことや心がけていることにハッとさせられたり色んなことに気付かせてもらえました。
自分の仕事に対するスタンスにも取り入れることが出来ると思うので人生の大先輩のアドバイスが沢山詰まった一冊です。
★この本が気になった方にはこちらの本もおすすめです★
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